Soramichi's blog

Some seek complex solutions to simple problems; it is better to find simple solutions to complex problems

レポートと論文の評価基準の違い

まえがき

論文とレポートの評価基準の違いについて、特にそれらの形式(外見)の違いの観点で説明する。 ここで論文とは卒論、修論、対外発表論文をすべて含んでいる。 もちろん博論もだが、博論を書こうというレベルの人にはこの記事は釈迦に説法なので読まなくてよい。

なおここで書いていることは私の経験や周囲の観測に基づいており、必ずしもそうではない場合ももちろんある。 特に研究分野が離れると文化が大きく違う可能性もある。

レポートは書きかけでも採点される

例えば問 1 から問 4 まで、ほぼ同じ難易度・分量の問題が 4 題あるレポート課題があるとする。 あなたは問 3 までは解けたが問 4 はサッパリ分からなかったので、問 3 までを完璧にして問 4 は白紙のレポートを提出した。 このとき、このレポートは何点ぐらいをもらえるだろうか?

もし私がこのレポートを採点するなら、各問について 25 点の配点を与え上記レポートは 25 点 x 3 = 75 点をつける。 おそらく多くの人がこれは妥当な判断だと考えるのではないだろうか? これはレポートの点数が、各問ができているかどうかによる加点方式(あるいは各問ができていないかによる満点からの減点方式)で採点されるためである。 レポートに限らず試験もこの方式で採点されるため、この方式に慣れていたりこの方式が当たり前と思っている人もいるのではないだろうか。

論文は書きかけでは採点されない

一方で論文は、書きかけでは採点されない(門前払いになる)場合が多い。 門前払いになるとは、途中にどんなに素晴らしいことが書いてあっても関係なく、 卒論や修論ならば不可になり卒業できない、査読付き論文であれば reject になるということである。

例えばあなたは修士研究で何か非常に本質的な問題を発見し、それを素晴らしい方法で解決したとしよう。 問題も解決策も素晴らしいのでそれだけでよい点をもらえるはずだと思い、 修論は書きかけ、例えば「関連研究」は章のタイトルだけ書いて中身は白紙、で提出したとする。

この修論は残念ながらおそらく多くの大学では不可になるだろう。 主査や審査委員会が寛容ならば「期日までに書き直し」になる可能性もあるが、一発で OK はありないと思う。 これは論文の採点が、全体として完成していることを前提としてスタートするからである。 完成していない論文は途中がよかろうが全体としては不可にせざるをえない。

つまりどうすればよいか

以上のことから逆算すると、論文で門前払いをくらわないためにはとにかく完成させることが重要であると言える。 例えば締切間際に、1. ある追加の実験をすること、2.「関連研究」の章を書ききること、の 2 つの TODO があるとする。 このとき優先すべきは明らかに 2 であり、追加実験が忙しくて論文が完成しなかった、という事態は絶対に避けるべきである(査読付き論文であれば「今回は諦めて、追加実験をして次の締め切りを目指す」こともありえるが、卒論や修論ではそうはいかない)。